57年間の風雪に耐えた興亜観音
本堂前広場に亀裂、桧材支柱も腐食


 ご参詣下さった方々はご存知のことと思いますが、興亜観音は熱海市伊豆山の鳴滝山という急峻な山の中腹に建立されています。
 斜面が急なので平坦な場所を造るには、支柱を立てて平坦部を支える方式が採用されています。
 ふと気付いたことなのですが、本堂前広場の一部に亀裂が生じているので、何事かと調べてみました。
 この広場を支えているのは桧材の支柱で、その支柱も一部は腐食が進んでいることがわかりました。
 水に強い桧材であったからこそ、57年間も持ちこたえることができたのでしょうか。本堂や休憩室が建築された昭和15年初めは支那事変の最中であり、鉄材は不足していた時代ですから、支柱に鉄骨や鉄筋コンクリートを用いるのは無理だったかもしれません。
 本堂自体は岩盤の上に建てられているので危険はありませんが、本道に向かって右側にある休憩室は桧材支柱に支えられた平坦部に建っています。
 専門家の調査によると、この休憩室は少し傾いているとのことです。
 本堂の左下方にある休憩室も桧材支柱で支えられている平坦部に建てられており、同様に危険な状態にあります。

本格的な改修工事費は○○○○万円

 去る5月18日の例祭には150名以上の参列者があり、大勢の人々が本堂前広場に参集したわけで、万一支柱が倒れて広場が崩れた場合には大惨事が生じたかも知れなかったと、私たちは肝を冷やしたのです。
 これは一大事と、本堂前広場の改修工事の概算見積もりは、何と○○○○万円と算定されたのです。
 建設資材の搬入に通常よりも多大な経費を要する――即ち幅1メートル足らず、長さ300メートルの急坂の参道を利用して資材を運搬しなけらばならない、――それも経費増の原因ですが、右の概算見積もりは2棟の休憩室を解体し新築するという改修案で、このために巨額の見積もりとなったわけです。
 専門家の立場からは2棟の解体新築は当たり前のことかも知れませんが、広場を賢固なものに改修することだけを考えておりましたわたしたちにとっては、まったく予想外、大変なことになったと感じた次第です。

当面の対策費は○○○○万円

 広場の亀裂、桧材支柱の腐食がありますから、当面の応急的な対策は実施せざるを得ません。
 そこで2棟の休憩室はそのままとし、広場を堅固な状態に改修するについて再び見積もりを依頼しました。
 その結果は○○○○万円と算定されました。
 改修工事は、現在の支柱の回りにコンクリートをうち、4本の鉄骨をボルトで締め付けて支柱の強度を保つという方式です。
 また広場は分厚いコンクリートで重量甚大となっているので、これを軽量の新材料に取りかえるという方式です。
 この改修である程度の長期間は安全であろうと考えられます。
 資材搬入のために参道の幅員を1.1メートルに拡幅整備は、参詣者の歩行を容易にするわけで、改修工事による副次的な効用と申せましょう。

ご協力のお願い

 松井石根大将は支那事変の最中(さなか)に於(おい)て、我が戦没将兵のみならず、現に戦っている敵方将兵の戦没者の霊をも弔(とむら)うべく興亜観音を建立されました。
 敵味方とわず怨親平等に戦没者を供養するのは日本の伝統精神であります。
 松井大将のご遺志を継承し、この聖地に於て興亜観音は永久に護持されねばなりません。
 改修に○○○○万円以上の資金を要するとなれば、現在の会費収入で処理することはできません。
 やはりお志ある方々に特別賛助金の拠出(きょしゅつ)をお願いせざるを得ないかと存じます。
 特別賛助金のお願いは、あらゆる角度から検討して修理内容を確定した上で、別途さしあげる予定でございますが、興亜観音の現状をご理解頂きたいと存じ、これまでの経過概要を申し述べました。(運営委員会)

※指定寄付の認可について

 募金に関し、指定寄付の認可があれば寄付金の損金算入が可能なので、念のために大蔵省税制1課にて認可条件などを伺いました。
 宗教法人については憲法上の制約もあって国庫支援は一切禁止されており、唯その所有する文化財の保全のみが対象となるとのことで、指定寄付の認可は不可能と判明しました。

興亜観音と本殿前広場舞台の図


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