2014.5.4(msnニュース)

プロパガンダを分析 外務省内部文書 中国はメディア活用 韓国は地方から展開

 歴史認識や尖閣諸島(沖縄県石垣市)、竹島(島根県隠岐の島町)の問題で中国と韓国が繰り広げるプロパガンダ(政治宣伝活動)について外務省が分析した内部文書を3日、入手した。それによると、中韓は「官民一体」で重層的に情報戦略を行っているとした。
 また、中国は国際機関や主要メディアを積極的に活用、韓国は地方から展開する特徴があると挙げた。

 外務省の内部文書によると、中国による宣伝活動について「独自の主張に基づき、歴史認識を焦点とした全面的な対日批判を展開している」と指摘した。具体的には、国連総会や首脳会談といった国際会議を活用しているほか、海外メディアやシンクタンクを通じて宣伝活動を繰り広げているとした。

 欧米などの第三国に対しては「政府よりも学者、有識者、記者による発信」を積極的に利用、欧米主要メディアに「中国の発信に影響を受けた報道がある」という。さらに、国営中国中央テレビ(CCTV)の多言語チャンネルや、世界120カ国で1086校に及ぶ中国語・文化教育拠点「孔子学院・課堂」が「独自の主張を重層的に発信している」と記した。中国は2020年までに孔子学院・課堂を全世界に配置する構えだ。

 韓国の動きについては「地方自治体、民間団体、個人による積極的な活動」がみられ、慰安婦や竹島、日本海の「東海」呼称で「強い働きかけ」を展開しているという。米国内では在米韓国人が活発に動いていることを指摘した。
 竹島に関する情報戦略については「領土問題ではなく歴史問題と主張し、竹島の歴史を自国の主張に沿うように解釈している」と分析した。                   ◇

 ■日本 広報強化も…遠い「官民一体」

 安倍晋三政権は、中韓が仕掛ける「情報戦」に対抗するため、平成26年度に予算を大幅に増額した。内閣府は「政府広報・広聴活動の推進、国際広報の強化」に25年度の44億円から65億円、外務省も「領土保全対策費」に25年度の8億1000万円から10億円をそれぞれ計上している。

 尖閣諸島や竹島に対する日本の主張を政府の動画サイトで配信して対抗、昨年末の安倍首相の靖国参拝に中国が内外で批判を展開すると海外の新聞に反論文を掲載してきた。各国でセミナーを積極的に開催したり、世界の有識者への接触を頻繁に図ったりすることで、日本の主張の理解を深めてもらう方向で対外情報戦略を進める考えだ。

 ただ、政府関係者は「中韓は官民一体での一致団結した活動を完璧に行っている」と驚きを隠さない。逆に日本の場合、「官民一体」には程遠く、「政府が前面に出る情報発信は先進民主国として世界の共感が得られない。相手の土俵に乗らないことだ」(外務省幹部)という消極姿勢も聞こえる。

 自民党は、外交・経済連携本部(衛藤征士郎本部長)が3月、政府による海外への情報発信や国際情報収集を強化するため、同本部の下に「国際情報検討委員会」を設置した。

 同委員会は現在、政府全体の情報発信を統括する新組織の設立や在外情報発信の拠点づくりを検討している。NHKの国際放送を利用した新しい情報戦略構想の具体化も進めて、年内にも提言を取りまとめる予定だ。(是永桂一)