おわりに

 以上、昭和史を考えるための幾つかの視点を指摘して来た。
 今日の昭和史に対する味方の枠組みを作った極東国際軍事裁判においては、日本国内の調査は行われたが、同じ当事国である米国や中国の国内事情に関する調査は許されなかったという。
 従って、昭和史の真相を明らかにするために不可欠の重要資料が表に出されないまま裁判が終了したのである。
 こうした日本の戦争相手国である米国の動きについて実態把握のないまま、一方的に日本の「反省」のみが追求され、また「戦争責任」が追求されるという基本構図は、今日もなお変わってはいない。
 しかしながらこれまで見て来たように、戦争相手国である米国の戦略そのものが、明らかに日米戦争の勃発の要因を作ってきたことは事実である。
 その意味で、米国の戦略、戦争責任を不問にしたままで日本の「反省」のみを追求したところで、そこからは昭和史の真の姿は現れて来ないのである。
 従って本当の意味での「反省」にもつながらないと思うのである。


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