発刊にあたって

 先の大東亜戦争開戦50周年にあたって、本会では、様々な角度からアメリカの戦前の極東外交を総括し、その研究成果を「昭和史の真実」として発刊した。
 戦争原因について専(もっぱ)ら我が国の戦争責任のみが論じられてきた風潮の中で、戦争の一方の当事者であるはずのアメリカ側の戦争責任については事実上不問に付されてきたのである。
 そこで戦前のアメリカのアジアにおける行動は一貫した極東戦略に基づいていたということを、(1)日本の満州権益への介入、(2)日中和平の阻害のための中国半日ナショナリズムの育成、(3)中国の反日闘争支援のための巨額の軍事援助と援蒋ルートの確保、(4)真珠湾以前に実質的に対日参戦をし、さらに本格的に参戦する口実作りのために日本を圧迫、という4つの視点において明らかにしたのである。
この米国の極東戦略を論じた「昭和史の真実」については、幸い多方面から好意的な反響があった。
 そこで今回、昭和史における我が国の歩みを決定づけた満州事変・支那事変・日米戦争に関して、それぞれなぜ勃発したのかに関して、その後の昭和史研究の成果を「昭和史の真実 PART2」としてまとめるに至った。
 すなわち本パンフレットでは、

(1)  ソ連・コミンテルンを背景とする共産パルチザンによる排日暴動、及びアメリカを背景として満州の張政権や中国国民党によって推進された苛烈(かれつ)な排日運動、この2つに対抗して、満州権益を守り日本人居留民の平和を維持するための措置が満州事変であった。
(2)  支那事変は、ソ連・コミンテルンに指導された中国共産党とアメリカに支援された国民党とが抗日統一戦線を形成して反日運動を激化させていった状況の中で、中国共産党が強引に日中両国間に戦争状態を作り上げようとして策動した結果勃発したものである。更には全面戦争に突入するとともに、中国側を米英仏ソの4ヶ国が対日抗戦の継続を条件に支援する体制を確立したことによって、長期化・どろ沼化することとなった。
(3)  日米戦争とは、欧州大戦勃発を契機として欧州諸国のアジア植民地に対する経済覇権を握ろうとしていたアメリカが、アジアにおいて自由貿易体制を求めていた日本の行動を、欧米諸国の植民地支配体制の破壊とみなして危機感を持ち、それを阻止するために強硬な対日圧迫を行った結果、勃発した戦争である。

 との3つの視点の提案を通じて、従来の侵略戦争史観に対する根本的な問い直しを迫り、日本が侵略国家でなかったことを明確にしようとした。
 国際社会における協力のあり方が問われ、また世界の指導国家の1つとして日本の責任が益々重大となってきている今日、21世紀を展望しての新たな国家像の確立が我が国にとって喫緊(きっきん)の課題となっていることは言うまでもない。
 しかしながら大東亜戦争を侵略戦争として断罪し、他国に謝罪することをもって国際協力の大前提とするか、あるいは大東亜戦争において果たした役割に自信と誇りを持ち、その精神の継承をもって国際協力の第一歩とするかは、今後の我が国の国際協力の方向性を定める重要な岐路となる。
 すなわち昭和史の総括が21世紀の日本国家及び国民の精神構造を決定する重要な鍵を握ることとなるのである。
 本パンフレットの問題提起が、いささかでも貢献できれば幸いである。


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