マイケル・ホンダ氏との対話

松尾一郎

マイケル・ホンダ元カリフォルニア州議員(現・合衆国下院議員)
靖国神社を訪れた時に撮影されたマイケル・ホンダ氏

田中宏元一ツ橋大学教授
田中宏・元一ツ橋大学教授

 平成11(1999)年12月10日午後、「戦争犯罪と戦後補償を考える国際市民フォーラム」メンバーの米国カリフォルニア州議員マイケル・ホンダ氏一行が靖国神社を訪れると聞きつけ、南京事件関係資料を用意し、待ち受けた。
 昼頃、靖国神社境内にて見学を行っている一同の中に私は割って入り、氏に史料を手渡すと共にアイリス・チャン著書に関して反駁した。
 氏は意外に好意的に受け入れてくれた上に、話の内容に興味を持った様子で、数回の問答を交わしたが時間の関係上、次の会場へと移動。
 そこでも個人的に南京事件に関しての意見交換をすることが出来たが、氏は日本の戦争自体を悪と考えており、南京事件に関しての知識は皆無であったが、異論を受け入れる寛容さがあり、翌日には前日手渡した史料を読破してくれて、私に対して感謝の言葉を掛けてくれた。
 その日のフォーラム壇上では彼がカリフォルニア州議会での対日非難決議の意図するところを述べ、彼自身は米国連邦議会への出馬の思惑があり、1980年代以降、4倍も増加した在米環太平洋出身者の反日感情票を集める為に行ったと・・・。
 遠まわしではあるが、暗に示した。
 彼自身ドイツの戦争犯罪と日本を比較するつもりは全く無く、日本政府を困惑させる意図で行った訳では無いと主張し、それどころか日本の立場を尊重する発言が飛び出したほどだ。
 彼自身、来日してからこの様な史料や事態が起こるとは予想すらしなかったのだろう。
 氏は第2次大戦中、米国での日系人強制収容者の1人でもあり、米国政府に対して人権補償要求をし、数年前に勝利している。
 今回、カリフォルニア州での決議案は氏にとって人権運動の延長線上であったのだろう。
 だが氏自身、歴史にうとく、来日して初めて事実の一端を垣間見て、このような発言になったと思う。
 私は毎日史料を手渡し話をするうちに氏自身の置かれている政治的立場が米国においても微妙であることを理解した。
 彼は日系人とはいえ米国州議院であり、自国の利益を追求する立場であることは間違いない。
 この問題はむしろ我々自身が広く真実を訴えるべきであると感じた。
 先日会見した日中史研究家のエバート氏も米国には日中関係資料そのものが無く、チャンの著書が信じられるのは仕方が無いと述べていた。
 今回の一件では日本側の過剰反応であり、むしろこの様な問題の本質を理解し対外的に誤解を解く努力こそが互いの歴史認識んおズレを正すことにつながると考える。
 私は日本の立場を主張する英語のホームページを完成させる必要性を改めて感じた。


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